はじめに:なぜ「技人国→特定技能」が増えているのか
最近、「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる技人国)で働いている外国人の方から、「特定技能に変えたい」というご相談が増えています。
オフィスワークから、工場・介護・外食・建設などの現場仕事への転身です。
理由はさまざまです。
「現場のほうが給料が良い」「残業代を含めると手取りが増える」「会社から現場作業を頼まれたが、技人国では認められないと言われた」「専攻と職務の関連性が認められず、技人国での転職が難しい」といった声などを聞いたりします。
ただし、技人国と特定技能はまったく別の在留資格です。
メリットだけで判断すると、家族や将来の永住に思わぬ影響が出ることがあります。
この記事では、変更の要件と事前に必ず確認しておきたい注意点をまとめます。
技人国と特定技能1号の主な違い
技人国は学歴や専門知識を生かす仕事、特定技能1号は人手不足分野で即戦力として働く仕事のための在留資格です。
主な違いは次のとおりです。
| 項目 | 技術・人文知識・国際業務 | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 仕事の内容 | 専門知識を要する業務 (現場作業は原則不可) |
特定産業分野の現場業務 |
| 取得の基準 | 学歴・実務経験と職務の関連性 | 分野別の技能試験+日本語試験 |
| 在留期間の上限 | なし(更新可) | 通算5年まで |
| 家族の帯同 | 可(家族滞在) | 原則不可 |
| 転職 | 職務内容が合えば可 | 同じ分野内で可 (変更許可が必要) |
| 雇用形態 | 派遣も可 | 原則直接雇用 (農業・漁業は派遣可) |
対象分野は、介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の16分野です。
さらに2026年1月の閣議決定で、物流倉庫・リネンサプライ・資源循環の3分野の追加が決まり、19分野に拡大します(試験・受入れ開始時期は分野ごとに異なるため、最新情報の確認が必要です)。
本人に求められる要件
技人国から特定技能1号に変更するには、主に次の要件を満たす必要があります。
- 18歳以上であること
- 分野ごとの技能評価試験に合格していること
- 働きたい分野の試験に合格する必要があります。
- 技人国の方は、技能実習2号の修了による試験免除が使えないのが通常です(過去に技能実習2号を良好に修了している場合は別途確認)。
- 日本語能力の試験に合格していること
- 原則として日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格が必要です。
- 介護分野は、これに加えて「介護日本語評価試験」の合格が必要です。
- 分野・業務によってはN3以上が求められます(例:自動車運送業のタクシー・バス運転者)。
- 健康状態が良好であること
- 特定技能1号での在留が通算5年を超えないこと
- 保証金の徴収や違約金契約がないこと
なお、技人国で大学を卒業していても、学歴で試験が免除されることはありません。
「日本語がN2あるから大丈夫」という方も、技能試験は別に受験が必要です。
受入れ企業(雇用主)側の要件
特定技能は本人だけでなく雇用する企業にも細かな基準があります。
本人が試験に合格していても、企業が要件を満たさなければ許可は出ません。
- 特定技能雇用契約:報酬は日本人が同じ仕事をする場合と同等以上であること
- 社会保険・労働保険・税金:適切に加入・納付していること
- 分野別協議会への加入:各分野の協議会に加入すること
- 支援計画の作成と実施:生活オリエンテーション、日本語学習の機会提供、定期面談などの支援を行うこと(登録支援機関への全部委託も可)
- 欠格事由に該当しないこと:過去1年以内に同じ業務の労働者を非自発的に離職させていない、行方不明者を出していない など
「今の会社でそのまま特定技能に切り替えたい」というケースもありますが、会社が受入れ機関としての準備を整えていなければ申請できません。
会社と早めに話し合うことが大切です。
変更前に必ず確認したい5つの注意点
1. 家族が「家族滞在」で一緒に住んでいる場合
特定技能1号では、新たに家族を呼び寄せる「家族滞在」は認められていません。
ただし、技人国の家族としてすでに「家族滞在」で日本に暮らしている配偶者やお子さんは、人道的な観点から「特定活動」への変更を申請することで、引き続き日本で生活できる道があります。
家族の手続きも本人の変更と並行して進める必要があるため、早めにご相談ください。
この点は、別の記事で詳しく解説する予定です。
2. 永住申請への影響
永住許可には、原則10年以上の在留のうち5年以上の就労資格での在留が必要です。
ただし、この「就労資格」から特定技能1号の期間は除かれます。技人国で積み上げてきた期間があっても、特定技能1号に変えると永住が遠のく場合があります。
3. 「通算5年」の上限
特定技能1号は通算5年が上限です。
その後も日本で働き続けるには、特定技能2号への移行などを考える必要があります。
2号は分野ごとの上級試験に合格する必要がありますが、家族帯同が可能で在留期間の上限もありません。
4. 許可前に現場仕事を始めない
技人国のままで工場のライン作業や調理、清掃などの現場業務に就くと、資格外活動(不法就労)にあたる可能性があります。
変更許可が出るまでは、新しい仕事を始めないでください。
5. 技人国に戻るのは簡単ではない
特定技能から再び技人国に戻ることは可能ですが、改めて学歴と職務の関連性などが審査されます。
「合わなかったら戻ればいい」とは考えず、長期的なキャリアを見据えて判断しましょう。
手続きの流れ
- 働きたい分野を決め、技能試験と日本語試験に合格する
- 受入れ企業と特定技能雇用契約を結ぶ(転職の場合は退職・入社のタイミングに注意)
- 企業側(or 登録支援機関)で支援計画の作成、協議会加入などの準備を行う
- 地方出入国在留管理局に「在留資格変更許可申請」を行う
- 許可後、新しい在留カードを受け取ってから就労開始
審査期間は1〜2か月程度が目安ですが、書類の不備があるとさらに長引きます。
まとめ
技人国から特定技能への変更は、試験に合格し受入れ企業の準備が整えば十分に可能です。
一方で、家族の在留を考えたり、永住申請や5年の上限などの長期的な影響も関わってきます。
「収入」だけでなく、5年後・10年後に日本でどう暮らしたいかを考えたうえで判断しましょう。
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※本記事は2026年10月時点の情報に基づいています。


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