アメリカで市民権を取って何十年。
「老後は日本で暮らしたい」「やっぱり日本人に戻りたい」と考える元日本人の方は少なくありません。
では、一度失った日本国籍は取り戻せるのでしょうか?
「再取得は難しい」とも聞きますが、実際はどうなのでしょうか。
この記事の結論
元日本人は、条件が大きく緩和された「帰化」で日本国籍を取り戻せます
- 元日本人の帰化(国籍法8条3号)は、居住年数・年齢・生計の要件が免除されます
- ただし、日本に住所があることが前提で、海外からは申請できません
- 日本は二重国籍を認めていないため、許可後にアメリカ国籍の放棄が必要です
- 「難しい」と言われるのは、要件よりも書類の準備と日本に住むまでの段取りです
日本国籍を取り戻す3つのルート
日本国籍を「再取得」するための専用の手続きはなく、原則は帰化です。
ただし、失った理由や年齢によってルートが分かれます。
| 該当する方 | 方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 国籍留保をせずに日本国籍を失った18歳未満の方 (海外で生まれ、出生届と一緒に国籍留保の届出をしなかった) | 国籍法17条1項の届出 | 日本に住所があれば、法務大臣への届出で日本国籍を取得できます。 帰化のような審査はありません |
| 外国籍の取得などで日本国籍を失った元日本人 (アメリカに帰化した、国籍選択で外国籍を選んだ など) |
国籍法8条3号の帰化 | この記事でご紹介する方法です |
| 一度日本に帰化した後、日本国籍を失った方 | 通常の帰化 など | 8条3号の対象外です (条文の括弧書き) |
17条1項の年齢要件は、2022年4月1日に「20歳未満」から「18歳未満」に変わりました。
国籍法8条3号とは?元日本人の帰化の条件
次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。 (中略) 三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの 国籍法第8条
通常の帰化には6つの条件がありますが、元日本人はそのうち住所(5年以上)・能力(18歳以上)・生計の3つが免除されます。
| 条件 | 通常の帰化 | 元日本人(8条3号) |
|---|---|---|
| 住所 | 引き続き5年以上日本に住んでいること | 年数の定めなし (現在、日本に住所があることは必要) |
| 能力 | 18歳以上で、本国法でも成人していること | 不要 |
| 生計 | 日本で暮らしていける資産・収入があること | 不要 |
| 素行 | 素行が善良であること | 必要 |
| 重国籍の防止 | 帰化によって元の国籍を失うこと | 必要 |
| 憲法の遵守 | 日本の政府を暴力で破壊することを企てる団体などに関わっていないこと | 必要 |
このほか、条文上の条件ではありませんが、手書きの「帰化の動機書」や担当官との面接で日本語の能力も確認されます。
目安は日本の小学校3〜4年生程度の読み書き(日本語能力試験のN3程度)と言われています。
日本で育った元日本人の方であれば、多くの場合問題にならないでしょう。
「日本国籍の再取得は難しい」と言われる3つの理由
条件は大きく緩和されているのに、なぜ「難しい」と言われるのでしょうか。
実際にハードルになるのは、次の3点です。
① 海外からは申請できない
8条3号は「日本に住所を有するもの」が対象です。
また帰化申請は、本人が住所地を管轄する法務局に出向いて行う必要があります。
つまり、まず在留資格を取得して日本に住むことが出発点です。
元日本人の方は、在留資格「日本人の配偶者等」が取れるケースが多く、就労の制限もありません。
どの在留資格になるかは、元日本人が日本に戻るための在留資格の記事と、早見表で確認できます。
② アメリカ国籍を手放す必要がある
日本は二重国籍を認めていないため、帰化には「元の国籍を失うこと」が条件になります。
アメリカの場合、日本に帰化しても自動的にアメリカ国籍がなくなるわけではないため、帰化が許可された後、速やかにアメリカ国籍の放棄手続きを行います。
アメリカ国籍の放棄は、米国大使館・領事館での手続きになります。
アメリカの年金や税金、アメリカに住む家族との関係など、放棄した後の影響も事前によく確認しておきましょう。
③ 集める書類が多い
日本の戸籍(ご自身が除かれた除籍謄本や改製原戸籍など)に加えて、アメリカの帰化証明書(Certificate of Naturalization)、出生証明書、婚姻証明書などと、その日本語訳が必要です。
どの書類が必要かは個人の経歴によって変わり、法務局との事前相談で指示を受けながら揃えていきます。
帰化申請の流れ
- 1. 在留資格を取得して日本に住む「日本人の配偶者等」などで入国し、住民登録
- 2. 法務局へ事前相談住所地を管轄する法務局に予約して相談
- 3. 書類の収集・作成戸籍・外国書類・翻訳・帰化の動機書など
- 4. 本人が申請法務局に本人が出向いて提出
- 5. 面接・審査一般に1年前後かかると言われます
- 6. 許可・官報告示告示の日に日本国籍を取得
- 7. 帰化届・国籍放棄1か月以内に市区町村へ帰化届。アメリカ国籍の放棄手続きも速やかに
帰化申請そのものに、法務局へ支払う手数料はかかりません。
戸籍や外国書類の取得費、翻訳費などは別途必要です。
帰化と永住、どちらを選ぶ?
日本に戻って暮らすだけなら、アメリカ国籍のまま「永住者」になる道もあります。
どちらが合うかは、アメリカ国籍を残したいかどうかが大きな分かれ目です。
| 比較 | 帰化(8条3号) | 永住 |
|---|---|---|
| 国籍 | 日本国籍(アメリカ国籍は放棄) | アメリカ国籍のまま |
| 申請できる時期 | 日本に住所があれば、年数の定めなし | 「日本人の配偶者等」なら、原則1年以上の在留 |
| パスポート | 日本のパスポート | アメリカのパスポート |
| 在留カード | 不要 | 必要(7年ごとに更新) |
| 選挙権 | あり | なし |
| 向いている方 | 日本人として日本に骨を埋めたい方 | アメリカとのつながりを残したい方 |
よくあるご質問
Q. 日本に住んで何年たてば申請できますか?
法律上、元日本人の帰化には居住年数の定めはありません。ただし、日本に住所があること、つまり生活の拠点が日本にあることが前提です。来日後、住民登録をして生活を始めた段階で、法務局に相談するのがよいでしょう。Q. アメリカ国籍の子どもも日本国籍を取れますか?
親子の順番がポイントです。親が先に帰化して日本国籍を取り戻せば、子どもは「日本国民の子」として国籍法8条1号の対象になり、日本に住所があれば居住年数の要件はありません。親が元日本人のままの場合は、「日本国民であった者の子」として国籍法6条1号の対象になり、引き続き3年以上日本に住んでいることが必要です。なお、18歳未満で国籍留保をしなかったために日本国籍を失ったお子さんは、届出で取得できる場合があります(国籍法17条1項)。Q. アメリカ国籍の配偶者も日本国籍を取れますか?
あなたが日本国籍を取り戻した後であれば、配偶者は「日本国民の配偶者」として国籍法7条の対象になります。引き続き3年以上日本に住んでいる場合か、婚姻から3年がたち、引き続き1年以上日本に住んでいる場合に申請できます。Q. 二重国籍のままではいけませんか?
日本は二重国籍を認めていないため、帰化が許可された後は速やかにアメリカ国籍の放棄手続きを行う必要があります。アメリカ国籍を残したい場合は、帰化ではなく永住を検討しましょう。Q. 帰化は必ず許可されますか?
条件が緩和されていても、許可は法務大臣の判断で、必ず許可されるとは限りません。素行に関わる事情(交通違反や納税の状況など)がある場合は、申請前に専門家へご相談ください。
まとめ
元日本人の方は、国籍法8条3号によって居住年数・年齢・生計の要件が免除され、日本国籍を取り戻しやすい立場にあります。
ハードルになるのは、日本に住むまでの在留資格の手続きと、帰化申請の書類準備、そしてアメリカ国籍の放棄です。
「日本に戻る」から「日本人に戻る」まで、順番を間違えずに進めることが、遠回りしないためのいちばんの近道です。
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※本記事は2026年11月時点の法令に基づいています。

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