前回の記事ではエントリーシートや面接、逆質問といった「日本式就活の基本」を紹介しました。
今回はさらに一歩踏み込んで多くの日本語学校・専門学校では教えてくれない、しかし知らないと選考で不利になりかねない「暗黙のマナー」を扱います。
これらは面接テクニックというより、「社会人としてどう振る舞うか」という日本特有の価値観に近いものです。
母国の常識と異なる部分も多いため、あらかじめ知っておくことをおすすめします。
メール・電話の作法
メールの書き方
日本の就活では企業とのやり取りにメールが多く使われます。
友人とのメッセージとは異なり、次のような形式が期待されます。
- 件名:「面接日程のご連絡(氏名)」のように、用件と自分の名前を件名だけで分かるようにする
- 宛名:「株式会社〇〇 人事部 〇〇様」のように、会社名・部署名・担当者名を正式名称で書く
- 本文の冒頭:「お世話になっております。〇〇専門学校の〇〇です。」のような定型的な書き出しから始める
- 返信の速さ:企業からの連絡にはできるだけ当日〜翌日中に返信するのが基本とされている
「返信が遅い」というだけでビジネスマナーが身についていないと判断されてしまうことがあります。
特にスマートフォンの通知を見落とした場合でも企業側からすると理由は伝わりません。
就活中はメールをこまめに確認する習慣をつけましょう。
電話のマナー
電話をかける際もいくつか気をつけたい点があります。
- 始業直後・昼休み・終業間際の時間帯は避け、日中の落ち着いた時間にかける
- 電話に出たら、まず「お忙しいところ恐れ入ります。〇〇専門学校の〇〇と申します」と名乗る
- 要件を簡潔に伝え、長く話しすぎない
スーツ・身だしなみの暗黙の基準
日本の就活では多くの場面でリクルートスーツと呼ばれる黒や紺を基調としたシンプルなスーツが着用されます。
企業によっては私服可としている場合もありますが、特に指定がない限りはスーツを選んでおくのが無難です。
- 髪型:清潔感が重視され、目にかからない前髪や、まとめた髪型が好まれる傾向がある
- アクセサリー:派手なアクセサリーやネイルは控えるのが一般的
- 靴・カバン:黒を基調としたシンプルなものが好まれる
これらは「個性を消せ」という意味ではなく、「初対面の相手に、清潔感と信頼感を伝える」という日本の商習慣に基づくものです。
母国の就活文化と大きく異なる場合は特に、事前に情報を集めておくことをおすすめします。
内定辞退・選考辞退の伝え方
複数の企業に応募するのは一般的なことですが、内定や選考を辞退する際の伝え方には注意が必要です。
日本の就活文化では辞退の連絡を怠ったり、突然連絡を絶ったりすることは大きなマナー違反とされています。
- 辞退を決めたらできるだけ早く、電話またはメールで丁寧に伝える
- 「他社の選考を優先することにしました」など、具体的すぎない理由で問題ない
- これまでの対応への感謝を一言添える
「気まずいから連絡しない」という選択はその企業や関係者との今後の関係を損なうだけでなく、日本の業界によっては人事担当者同士のつながりを通じて評判が伝わることもあります。
円満に断ることも就活における大切なスキルの一つです。
「察する文化」への戸惑いとの向き合い方
日本のビジネスコミュニケーションには、「言わなくても分かってほしい」「相手の意図を察する」という文化が根強くあります。
これは留学生にとって最も戸惑いやすいポイントの一つかもしれません。
たとえば、面接官がはっきり「不合格です」と言うことは少なく、「またご縁がありましたら」というような曖昧な表現で結果が伝わることがあります。
また、企業からの指示が明確でない場合でも、「聞き返すのは失礼にあたるのでは」と感じて、確認をためらってしまう留学生も少なくありません。
ここで大切なのは、「察する文化を完璧に身につける」ことを目指すのではなく、「分からないことは丁寧な言葉遣いで確認して構わない」と知っておくことです。
「恐れ入りますが、〇〇について確認させていただけますでしょうか」といった聞き方をすれば、失礼にはあたりません。
分からないまま曖昧に進めてしまう方が、後々のトラブルにつながりやすいのです。
まとめ
この記事で紹介したマナーは、どれも「教わらなければ分からない」ものばかりです。
学校で体系的に教えてもらえないからといって、知らないまま選考に臨む必要はありません。
一つひとつは小さなことですが、積み重なると企業側が受ける印象は大きく変わります。
次回はこうした基本を押さえたうえで、「在留資格に理解のある企業をどう見分けるか」という、就活の総仕上げとなるテーマを扱います。
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