ここまでの記事で、「いつまでに何をすべきか」「どの在留資格を目指すべきか」を整理してきました。
しかし、スケジュールと制度を理解しても実際の就職活動でつまずく留学生は少なくありません。
理由は単純で、日本の就活には独特の作法があり、それを知らないまま選考に臨んでしまうからです。
日本人学生にとっては当たり前でも、留学生にとっては初めて聞く言葉・初めて経験する慣習ばかりです。
この記事では、日本式就活の基本を一つずつ整理して解説します。
エントリーシート(ES)とは何か
エントリーシート(ES)とは、応募先の企業に提出する、自己PRや志望動機などをまとめた書類のことです。
履歴書と似ていますが、履歴書が学歴・経歴などの事実を記載するのに対し、ESは「なぜこの会社を志望するのか」「学生時代に何に力を入れたか」といった、自分の考えや経験を文章で伝えるものです。
多くの企業ではESの内容が一次選考の合否を左右します。
書類選考を通過できなければ面接にすら進めないため、ESは「とりあえず埋める書類」ではなく、選考の入口として重要な位置づけを持っています。
ESでよく聞かれる質問の例
- 志望動機(なぜこの会社・この業界を選んだのか)
- 自己PR(自分の強み・アピールポイント)
- 学生時代に力を入れたこと(通称「ガクチカ」)
- 将来のキャリアビジョン
特に「学生時代に力を入れたこと」は、日本の就活特有の質問です。
留学生の場合、日本語学習や異文化での生活そのものが立派な経験になりますので、「特別な実績がないと書けない」と身構える必要はありません。
面接の基本マナー
日本の面接には母国の文化とは異なる独特の作法があります。
知らないまま臨むと内容以前の部分で評価が下がってしまうことがあるため、事前に押さえておきましょう。
- 入室時のノック:ドアを2〜3回ノックし、「どうぞ」と言われてから入室する
- お辞儀:入室時・着席前・退室時など、節目でお辞儀をする習慣がある
- 言葉遣い:面接では敬語を使うのが基本。友人と話すようなくだけた言葉遣いは避ける
- 着席のタイミング:「どうぞお座りください」と言われてから座る
これらは形式的に見えるかもしれませんが、日本の企業文化では「基本的なビジネスマナーが身についているか」を見る指標として重視されています。
内容の受け答えがどれだけ良くても、マナーの部分で違和感を与えてしまうと、評価に影響することがあります。
「逆質問」という日本特有の慣習
面接の最後に、「何か質問はありますか?」と聞かれることがよくあります。
これを「逆質問」と呼びます。
多くの留学生が戸惑うポイントの一つですが、これは単なる形式的な確認ではなく、志望度の高さや企業研究をどれだけしっかり行ったかを見られる場でもあります。
避けたほうがよい逆質問の例
- 調べればすぐに分かること(会社の設立年、事業内容など)
- 給与・休日についてだけを聞く質問(志望度が低いと受け取られやすい)
- 「特にありません」という回答(準備不足と見なされることがある)
好印象につながりやすい逆質問の例
- 「入社後、外国人社員として活躍されている方はどのような業務を担当されていますか」
- 「配属先が決まるまでのプロセスについて教えてください」
- 「御社で活躍されている方に共通する特徴はありますか」
逆質問は、自分の熱意を伝える最後のチャンスでもあります。あらかじめ2〜3個、質問を準備しておくことをおすすめします。
知っておきたい就活用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 御社(おんしゃ)・貴社(きしゃ) | 面接や書類で相手の会社を指す敬語表現。話し言葉では「御社」、書き言葉では「貴社」を使うのが一般的 |
| 弊社(へいしゃ) | 企業側が自分の会社をへりくだって呼ぶ言葉。応募者側は使わない |
| 内々定 | 正式な内定の前に、企業から非公式に伝えられる採用の意思表示 |
| 内定 | 企業から正式に採用が決定したことを通知される状態 |
| ガクチカ | 「学生時代に力を入れたこと」の略。ESや面接で頻出の質問 |
| OB・OG訪問 | 志望企業で働く卒業生を訪ね、話を聞く活動。留学生でも活用できる情報収集手段 |
まずは「知っている」状態を作ることから
ここで紹介した内容は、日本人学生であれば大学のキャリアセンターや先輩から自然と耳に入ってくる情報です。
しかし、留学生にとっては意識的に調べない限り触れる機会がありません。
この記事で紹介した基本を知っているだけで、選考におけるスタートラインは大きく変わります。
次回はさらに一歩踏み込んで、「知らないと選考で減点されてしまう」暗黙のマナーについて解説します。
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