「まずは特定技能で経験を積んで、その後に技人国へ切り替えればいい」――こう考えている留学生に、これまで何人も出会ってきました。
一見、堅実なキャリアプランに思えます。
しかし、この記事でお伝えしたいのは、この考え方は制度上そのままでは成立しないという事実です。
以前にも簡単に触れましたが、今回はこのテーマを1本にまとめて、正しい理解と代わりに考えるべき進路の立て方を整理します。
特定技能の実務経験は、技人国の「実務経験」として評価されない
技人国ビザの取得要件の一つに、専攻科目と業務内容の関連性に代わるものとして「10年以上の実務経験」があります。
ここで多くの方が誤解するのが、「特定技能として何年か働けば、この実務経験としてカウントされるのでは?」という考え方です。
しかし、出入国在留管理庁の審査運用上、特定技能での就労によって得た経験は技人国が求める実務経験としては評価されないという考え方が示されています。
特定技能のキャリアアップはあくまで「特定技能1号」から「特定技能2号」への移行という制度内で完結するように設計されており、技人国への移行ルートとしてはそもそも想定されていないのです。
つまり、「特定技能で数年勤務 → 技人国」というステップアップの図式は、現在の制度上は描けません。
この点を知らずに特定技能を選んでしまうと、「いずれ技人国に切り替えるつもりだったのに、その道が閉ざされていた」という状況になりかねません。
では、特定技能を選んだ場合、どうキャリアを積むのが現実的か
技人国への移行が想定されていないからといって、特定技能がキャリアの行き止まりというわけではありません。
現実的な選択肢は次の通りです。
- 同一分野内での「1号→2号」への移行:対象11分野であれば、技能を積み重ねて2号に移行することで、在留期間の上限撤廃・家族帯同という、技人国に匹敵する長期的な生活基盤を築けます
- 同一分野内での転職・昇進:特定技能は同一分野内であれば転職が可能です。分野内でキャリアアップを図ることは十分に現実的です
- 分野そのものを最初から吟味する:例えば、介護分野などを選び「介護福祉士」の国家資格を取得すると、「介護」の在留資格で長く日本に滞在でき家族滞在も可能となります。
重要なのは、「特定技能はいずれ技人国に切り替えるまでの仮の選択」と捉えるのではなく、「特定技能の中でどこまでキャリアを伸ばせるか」という発想に切り替えることです。
「技人国を最初から目指すべきだった」とならないために
ここまでの内容を踏まえると、重要なのは次の一点に尽きます。
技人国を目指すのか、特定技能を軸にキャリアを積むのかは、就職活動を始める前の段階で方向性を決めておく必要があるということです。
「とりあえず内定が出た方を選んで、後から考える」というやり方では、この記事でお伝えした制度上の壁に内定が出た後になって気づくことになりかねません。
以前の記事でお伝えした比較表を参考に、自分の専攻内容・興味・将来設計から逆算して、早い段階でどちらの軸で就職活動を進めるかを決めておくことをおすすめします。
いつ決めればいいのか
以前の記事でお伝えした通り、専門学校2年生であれば8〜9月の業界研究の段階がこの判断をする最初のタイミングです。
この時期に「自分の専攻は技人国向きか、特定技能向きか」を一度整理しておくことで、10〜11月のエントリー時期に、迷いなく的を絞った就職活動ができるようになります。
まとめ
特定技能から技人国への移行は、制度上想定されていません。
この事実を知らないまま「とりあえず就職できればいい」という考えで進路を選んでしまうと、後になって想定していたキャリアが描けないことに気づく可能性があります。
技人国か特定技能かは、就職活動を始める前に自分の専攻と将来像から決めておくべき選択です。
※本記事の在留資格に関する情報は、出入国在留管理庁の公表資料および審査運用の考え方、行政書士業務の実務経験に基づいています。個別の状況によって扱いが異なる場合がありますので、具体的な進路については専門家にご相談ください。
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